「最近、ちょっとお腹が出てきたな」
「健康診断で肝機能の数値が引っかかったけど、特に症状はないし…」
なんて思っていませんか?
実はそのサイン、あなたの肝臓が脂肪で埋め尽くされているかもしれません。
脂肪肝は、特別な人だけがなる病気ではありません。
日本人の3人に1人、メタボ健診受診者の約半数が脂肪肝と言われています。
身近な病気でありながら、自覚症状が少ないため放置されがちです。
しかし、この「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓に脂肪が溜まりすぎると、
想像もしない恐ろしい病気へとつながる可能性があります。
今回は、そんな脂肪肝について解説します。
肝臓の働きを簡単に説明
肝臓は「体の化学工場」とも呼ばれ、栄養の代謝、解毒、胆汁の生成、そしてエネルギーの貯蔵といった、生命維持に不可欠な働きをしています。
まさに、私たちの健康を支える縁の下の力持ちです。
脂肪肝の話はエネルギー貯蔵の役割に関わってきます。
肝臓は体に入ってきた糖をエネルギーとして肝細胞に貯蔵しています。
肝細胞は、糖を一時的に保管する「倉庫」のようなものだとイメージしてください。
適切な食事量を摂取し、活動量がある程度確保されている状態であれば、
私たちは日々の活動でこの貯蔵されているエネルギーを適宜使用します。
すると倉庫には適度な余剰スペースが生まれ、次の食事で摂った必要分の糖をエネルギーとして再び貯蔵する、というスムーズなサイクルが回ります。
このバランスが保たれていれば、肝臓に脂肪が貯まることはありません。
肝臓が脂肪に埋め尽くされるメカニズム
しかし、この倉庫に入りきらない多量の糖が頻繁に運ばれてきたとしたらどうなるでしょうか?
例えば、一度に多量の糖質を摂ったり、体を動かさずエネルギーを消費しなかったりすると、倉庫のスペースはすぐに満杯になってしまいます。
しかし、もしもの時のために貴重なエネルギー源を捨てるのはもったいない…
そこで、余った糖は捨てずに中性脂肪という形に変え、肝細胞に貯蔵し始めるのです。
人の体って良くできてますよね。
エネルギーとして貯蔵された糖や脂肪を十分に消費する前に、また次の食事で大量の糖が取り込まれてしまう…というサイクルが繰り返されます。
この状態が続くと、肝臓は徐々に中性脂肪でパンパンに埋め尽くされてしまいます。
健康な肝臓にも通常3〜5%程度の脂肪はあります。
これが30%以上になると「脂肪肝」と診断されるのです。
脂肪肝の原因は?
基本的には生活習慣の乱れが脂肪肝の原因となります。
糖質の過剰摂取、アルコールの飲み過ぎ、運動不足 。
その他の原因として、極端で急激なダイエット、一部の薬剤の影響、甲状腺機能低下症なども原因として挙げられます。
脂肪肝を甘く見てはいけない理由
「まぁ、脂肪が溜まっているだけなら大したことないな」と思っていませんか?
それはかなり危険な思い違いです。
脂肪肝は、以下のような危険をはらんでいます。
①肝臓の炎症(脂肪肝炎:NASH)へ進行する可能性
肝臓に脂肪が溜まりすぎると、肝細胞にストレスがかかり、炎症が引き起こされます。
この状態を「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼びます。
これは単なる脂肪肝とは異なり、NASHになると肝臓の細胞が壊れ始め、
放置すると肝硬変や肝臓がんへと進行するリスクが高まります。
脂肪肝はまだ治す事が可能です。
ですが、いくら再生能力の高い肝臓でも、肝炎まで進むと元に戻すのが難しくなります。
そして肝硬変になると、元の状態に戻すことは現在の医学では困難です。
②全身への悪影響
肝臓に溜まった脂肪からは、炎症性物質(サイトカインなど)が分泌されます。
これらの物質は血管を巡り、肝臓だけでなく全身に影響を及ぼします。
体中で小さな火事が起こり続けているという事です。
また、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」を招くことが分かっています。
インスリン抵抗性は肥満を招きますし、糖尿病の入り口とも言える状態です。
③血中コレステロール・中性脂肪への影響
肝臓で中性脂肪が過剰に作られ続けると、肝臓内で蓄えておかなくなるため、
それを血液中に送り出す量も増えていきます。
その結果、健康診断で指摘される中性脂肪やLDLコレステロールの値が高くなることにもつながり、動脈硬化のリスクも高まります。
今日からできる!脂肪肝予防のための対策
脂肪肝は生活習慣病です。
だからこそ、日々の生活を見直すことで、改善・予防が可能です。
①糖質の摂取量を制限する
とにかくまずは糖質の摂りすぎに注意しましょう。
余分な糖が無ければそもそも脂肪は作られません。
糖質は様々な食品に含まれています。
何も考えずに食べていると、あっという間に必要量をオーバーします。
②良質なタンパク質や脂質を摂取する
糖質を減らした分は、良質なタンパク質や脂質を摂取しましょう。
タンパク質は、肉、 魚介類、卵、乳製品、大豆など。
脂質は動物性の脂質ばかりではなく、オリーブオイルやアマニ油、MCTオイル、
魚に含まれる油など普段の生活で不足しがちな種類の油をバランス良く摂りましょう。
③食物繊維を積極的に摂る
葉物野菜、海藻、きのこなど。
これらは食物繊維が豊富で糖質量も少なく、血糖値の上昇を抑えます。
食物繊維も多くの現代人が満足に摂れていません。
④アルコールは控えめに
身体的な観点から見ればアルコールは人体に不要です。
ただでさえ、多くの仕事をこなしている肝臓に余計な仕事を与えるだけなので、
どうしても飲む場合は控えめに。
飲んでる本人は気持ち良いかもしれませんが、
肝臓は「働かせすぎだ!!」と悲鳴を上げています。
毎日飲むのではなく、休肝日もちゃんと設けましょう。
⑤毎日適度な運動を行う
ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を行いましょう。
特に朝食前の空腹時に行うと脂肪燃焼に効果的です。
通勤で歩く距離を伸ばしたり、階段を積極的に使うだけでも変わってきます。
筋トレも血糖値のコントロールに有効です。
とにかく毎日少しずつでも体を動かす習慣を取り入れましょう。
⑥体重管理
適正体重を維持することも重要です。
たった数%の体重減少でも、肝臓の脂肪は大きく減ると言われています。
⑦定期的な健康診断
症状が出始めた時には、すでに肝臓へのダメージはかなり蓄積されています。
早期発見・早期治療が大切です。
肝機能の数値(ALT, AST, γ-GTPなど)や中性脂肪、血糖値をチェックしましょう。
健康な肝臓が健やかな毎日を作る
脂肪肝は進行すると深刻な病気へとつながる危険な状態です。
しかし、適切な対策をすればちゃんと改善できます。
「たかが脂肪肝」と放置するのはやめましょう。
自覚症状がなくても日々の生活習慣を見直すことがあなたの肝臓、そして健康な未来を守ります。
今の生活はあなたの肝臓を働かせ過ぎていませんか?