糖質制限をして感じた体の変化の中で、ニキビなどの肌トラブルがなくなったことを前回のブログで書きました。
当院は皮膚科も診察しているため、今回はここを深掘りして、糖質とニキビの関係について詳しく解説していこうと思います。
「チョコレートなど甘いものを食べるとニキビができる」という話、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「食べ物とニキビは関係がない」という情報もありますが、実はそうでもありません。
近年、糖質の過剰摂取がニキビの発生や悪化に繋がるメカニズムが研究で明らかになってきているのです。
なぜできる?ニキビ発生の基本的なメカニズム
まず、どのようにしてニキビができるのか、その基本的な原因と流れを解説しましょう。
①過剰な皮脂分泌
ニキビの主な原因の一つは、皮脂の過剰な分泌です。皮脂は肌のうるおいを保つために必要なものですが、これが多すぎると問題を引き起こします。
特に、ホルモンバランスの変化(思春期や生理前など)やストレス、食生活の乱れなどが原因で、皮脂腺が刺激され、必要以上に皮脂が分泌されることがあります。
②毛穴の詰まり
増えすぎた皮脂は、肌の古い角質や汚れと混ざり合い、毛穴の出口を塞いでしまいます。
本来、肌はターンオーバー(新陳代謝)によって古い角質を自然に排出しますが、
このサイクルが乱れると、毛穴の出口が硬くなり、皮脂がスムーズに排出されずに毛穴の中に溜まってしまいます。
これが、ニキビの初期段階である「コメド(面皰)」と呼ばれる状態です。
③アクネ菌の増殖と炎症
毛穴の中に皮脂が閉じ込められると、そこはアクネ菌にとって絶好の繁殖場所となります。
アクネ菌は普段から肌に存在する常在菌ですが、毛穴の中で皮脂をエサにして異常に増殖すると、炎症を引き起こす物質を産生し始めます。
これにより、毛穴の奥で炎症が起こり、赤く腫れたニキビ(赤ニキビ)や、膿を持ったニキビ(黄ニキビ)へと進行していきます。
・赤ニキビ
・黄ニキビ
インスリン分泌過剰が皮脂分泌を促進するメカニズム
ここからが、糖質とニキビの直接的な関係の解説です。
糖質を大量に摂ると、血糖値を下げるためにインスリンが過剰に分泌されます。
この過剰に分泌されたインスリンは、体内で男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌を刺激することが分かっています。
男性ホルモンには、皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を促進する働きがあります。
ニキビは毛穴に皮脂が詰まることから始まりますから、皮脂の分泌が増えれば増えるほど、
毛穴が詰まりやすくなり、ニキビができやすい環境が作られてしまうのです。
さらに、インスリンはIGF-1(インスリン様成長因子-1)という物質の産生も促進します。
IGF-1もまた、皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を高める作用があります。
これだけでなく、成長因子の名の通り、毛穴の周りの皮膚細胞の増殖を促します。
これにより毛穴が詰まりやすくなり、ニキビのできやすい環境をさらに作り出してしまいます。
女性にも関係するの?
「男性ホルモンが関係するなら、男性だけの話?」と思うかもしれません。
しかし、このメカニズムは女性のニキビにも深く関係しているのです。
女性の体内にも男性ホルモンは存在しています。
高インスリン状態が続くと、卵巣からの男性ホルモン産生を刺激したり、
男性ホルモンの働きを抑えるタンパク質を減らしたりすることで、
女性でも皮脂分泌の増加やニキビの悪化につながることがあります。
特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、この関係が顕著に見られます。
炎症の促進と肌のターンオーバーの乱れ
高糖質な食事を摂ることは、体内で小さな炎症を引き起こしやすいという側面があります。
ニキビは炎症性の皮膚疾患ですから、体内の炎症が促進されることでニキビが悪化しやすくなります。
また、インスリン過剰状態や、高血糖によるAGEs(最終糖化産物)の蓄積は、肌のターンオーバー(新陳代謝)を乱す可能性も指摘されています。
ターンオーバーが正常に行われないと、古い角質が毛穴に残りやすくなり、これでニキビができやすい環境がさらに整ってしまうのです。
思春期と大人、ニキビは年齢を問わず関係する
ニキビは、思春期特有の悩みだと思われがちですが、糖質とニキビの関係は年齢を問いません。
思春期ニキビ
思春期は性ホルモンの分泌が活発になる時期であり、皮脂腺も非常に敏感です。
この時期に高糖質な食生活を送ると、インスリンの過剰分泌が拍車をかけ、男性ホルモンの影響をさらに強めてニキビを悪化させる可能性があります。
大人ニキビ
大人のニキビは、ストレス、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化など様々な要因が絡み合いますが、その中でも食生活、特に糖質の摂取は大きな影響を与えます。
高インスリン状態やホルモンバランスの乱れが気になる年代の方にとって、この情報は特に重要です。
「血糖値のコントロール」で体の内側から美肌ケアを
では、ニキビを防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか?
原因としてインスリン分泌過剰状態があるわけですから、やはり糖質の摂取を抑えた食生活を心がけることが大切です。
具体的な糖質コントロールの方法については、過去の記事を参考にしてみてくださいね。
もちろん、適切な洗顔や保湿などで肌を清潔に保つことも必要ですし、現在は様々なニキビ治療薬もあります。
ニキビでお悩みの際は、いつでも当院にご相談ください。
専門的な視点から、あなたに合ったアドバイスや治療法をご提案させていただきます。
まとめ
ニキビは皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖と炎症によって引き起こされます。
そして、意外に思われるかもしれませんが、糖質の過剰摂取がニキビの発生や悪化に深く関わっていることが分かっています。
これは、高糖質食がインスリンの過剰分泌を招き、それが男性ホルモンを刺激して皮脂分泌を促進したり、肌のターンオーバーを乱したりするためです。
このメカニズムは、思春期の方も大人の方も、そして男性も女性も関係なく、ニキビに影響を与えます。
ニキビ改善のためには、外側からのケアだけでなく、内側からのケアも非常に大切です。
ニキビにお悩みの方は、自身の食生活を見直してみるのもニキビ改善のきっかけになるかもしれません。
血糖値コントロールを意識した食事を心がけ、健康的な肌への一歩を踏み出しましょう。
○画像引用:マルホ株式会社