前回はスポーツドリンクに含まれる糖質についてお話ししました。

みなさんは、「ペットボトル症候群」という言葉を聞いたことがありますか?

これは、清涼飲料水やスポーツドリンクを日常的に大量に飲むことで、血糖値が急激に上昇し、さまざまな体調不良を引き起こす状態のことを言います。

正式には「ソフトドリンクケトーシス」や「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれ、

特に今のような暑い季節や、甘い飲み物を習慣的に飲む方に多く見られます。

今回は現代人が陥りやすい「ペットボトル症候群」について解説していきたいと思います。

あなたも危ない?ペットボトル症候群のサインとメカニズム

以下のような症状に心当たりはありませんか?

  • やたらと喉が渇く:飲んでも飲んでも喉の渇きが癒えない
  • 頻繁にトイレに行く:特に夜間の排尿が増えた
  • 体がだるい、疲れやすい:十分な睡眠をとっても疲労感が抜けない
  • 体重が急に減った:ダイエットしていないのに体重が減少する
  • 集中力が続かない:仕事や勉強中にぼーっとすることが増えた

これらの症状は、血糖値が異常に高くなっているサインかもしれません。

甘い飲み物を大量に飲むと、血液中に急激にブドウ糖が増えます。

体は血液中のブドウ糖の濃度を薄めようとして、細胞から水を血管内に引っ張ります。

水分を持っていかれた細胞は水不足になりますから、強烈な喉の渇き(口渇)を感じるようになります。

これにより水分を飲みたくなるのです。(これが多飲です。)

さらに、高すぎる血糖値を体外へ排出しようと、腎臓が尿中に糖を排出します。

この時、糖と一緒に大量の水分も一緒に排泄されるため、尿の量が増え(これが多尿です)、体は脱水状態に傾いてしまいます。

すると、体はさらに水分を欲して喉が渇き、また甘い飲み物を飲んでしまう…という悪循環に陥ってしまうのです。

この状態が続けば、糖尿病を発症するリスクも非常に高まります。

糖尿病、糖尿病予備軍の方はさらに注意を

特に糖尿病と診断されている方、あるいは糖尿病予備軍の方は、このペットボトル症候群のリスクがさらに高くなります。

血糖値をコントロールする機能がもともと低下しているため、清涼飲料水に含まれる大量の糖分が、より深刻な影響を及ぼす可能性があるのです。

実際、重症例では血糖値が500mg/dLを超えることも珍しくなく、時に1000mg/dLを超える高値を示すこともあります。

ちなみに血糖値の正常値は、

空腹時で70〜109/dL、食後2時間で140mg/dL未満とされています。

この状態が続けば、重症の場合、血液が酸性に傾くアシドーシスを起こしたり、意識が混濁する意識障害に陥ったりと、命に関わる状態になることもあります。

単なる「だるい」「喉が渇く」といった症状では済まされない危険性があることを知っておくべきです。

ペットボトル症候群を防ぐためにできること

では、どうすればペットボトル症候群を防ぐことができるのでしょうか?

①飲み物を見直す

  • 喉が渇いたら、まずは水やお茶(無糖)、炭酸水などを選びましょう。
  • スポーツドリンクは、激しい運動などで大量に汗をかいた場合に限り、適切に摂取するようにしましょう。
  • 普段飲むジュースや炭酸飲料、コーヒー飲料、フルーツ系ジュースなどの糖分量をチェックする習慣をつけましょう。

②適切な水分補給

  • こまめに水分を摂ることを心がけましょう。一気に飲むのではなく、少量ずつ複数回に分けて飲むのが効果的です。
  • 喉が渇く前に水分を補給する意識を持つことが大切です。

③食生活のバランス

  • 甘い飲み物だけでなく、普段の食事に含まれる糖質にも注意を払いましょう。
  • バランスの取れた食生活は、血糖値の安定にも繋がります。

まとめ:賢い水分補給で健康な毎日を

「ペットボトル症候群」は、私たちの身近にある甘い飲み物が引き起こす、見過ごされがちな危険な状態です。

喉の渇きを解消するつもりが、かえって体に負担をかけ、場合によっては深刻な健康問題に繋がる可能性があることをご理解いただけたでしょうか。

特に糖尿病の方や、血糖値が気になる方は、清涼飲料水の摂取には一層の注意が必要です。

喉が渇いた時には、まずは水やお茶など無糖の水分を選ぶ習慣をつけ、甘い飲み物はあくまで「嗜好品」として楽しむ程度に留めましょう。

私たちの体は、普段口にする物で作られます。

今日から飲み物を見直し、賢い水分補給を心がけることで、健康で快適な毎日を送る第一歩を踏み出しましょう。