近年、砂糖の代替品として広く利用されている人工甘味料。
様々な加工食品にも多く利用されています。
ダイエット中の方も砂糖の代わりに選んでいる方も多いのではないでしょうか。
しかし、メディアやインターネットでは賛否両論が飛び交い、何が正しい情報なのか迷ってしまうこともあるかもしれません。
人工甘味料も、その特性を理解した上で賢く利用することが大切です。
今回は、人工甘味料の主なメリットとデメリットを分かりやすく解説します。
そもそも人工甘味料ってなんなのか
定義としては、「化学的に合成されて作られた甘味料」です。
主な種類として大きく「合成甘味料」と「糖アルコール」に分かれます。
合成甘味料::自然界に存在しない糖質を化学合成したもの。
糖アルコール::もともと自然界にある糖質を化学合成、または加工したもの。
この2つが一括りで人工甘味料と呼ばれたりします。
代表的な合成甘味料の種類
①アスパルテーム:砂糖の約200倍の甘さ
②アセスルファムカリウム:砂糖の約200倍の甘さ
③スクラロース:砂糖の約600倍の甘さ
④サッカリン:砂糖の300〜500倍の甘さ
⑤ネオテーム:砂糖の7000倍〜13000倍の甘さ
⑥アドバンテーム:砂糖の約20000~40000倍の甘さ
どの甘味料も甘さが凄まじいですね。
この中で特に加工食品によく使われるのは、
「アスパルテーム」「アセスルファムカリウム」「スクラロース」の3つでしょうか。
代表的な糖アルコール
①キシリトール:砂糖と同程度の甘さ
②ソルビトール:砂糖の60~70%程度の甘さ
③マルチトール:砂糖の70~80%程度の甘さ
④エリスリトール:砂糖の75%程度の甘さ
⑤マンニトール:砂糖の60%程度の甘さ
⑥還元水飴:砂糖の10~60%程度の甘さと幅があります。
糖アルコールの方が合成甘味料に比べると穏やかな甘さですね。
人工甘味料の主なメリット
①カロリー・糖質がほぼゼロ
これが最大のメリットです。砂糖と同じか、それ以上の甘さを持ちながら、消化・吸収されにくいため、摂取カロリーや糖質量を大幅に抑えることができます。
これは、ダイエット中の方や、血糖値の管理が必要な方にとって大きな利点となります。
②血糖値に影響を与えにくい
ほとんどの人工甘味料は、体内で血糖値を上昇させません。
糖尿病患者さんや、血糖値の急激な上昇を避けたい方にとっては、砂糖の代替として有用な選択肢となります。
私自身も実際に血糖の変化を試してみたのですが、確かに血糖値に大きな変化は見られませんでした。
この点は、血糖コントロールを意識している方には、特に魅力的なメリットだと感じています。
③虫歯になりにくい
虫歯菌は砂糖をエサにして酸を作り出し、歯を溶かします。
人工甘味料は虫歯菌の栄養源とならないため、虫歯のリスクを低減する効果が期待できます。
④少量で強い甘み
砂糖の数百倍もの甘さを持つ種類もあり、ごく少量で十分な甘みを得られます。
そのため、使用量を抑えられ、製品のコストや体積を抑えることにも繋がります。
多くの加工食品に用いられるのはこのためですね。
人工甘味料の主なデメリット
様々なメリットがある一方で、人工甘味料には注意すべき点や、まだ研究段階の課題も存在します。
①味の違和感(後味)
砂糖とは異なる独特の甘みや後味を感じることがあります。
この味が苦手で摂らないという人もいるでしょう。
特に、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどは、種類によって特有の風味があり、飲料や食品によっては好みが分かれる場合があります。
②腸内環境への影響(研究途上)
一部の研究では、特定の人工甘味料が腸内細菌叢に変化をもたらし、腸内環境に影響を与える可能性が示唆されています。
ただし、人間への影響についてはまだ研究途上であり、明確な結論は出ていない状況です。
③食欲増進の可能性(議論中)
甘さを感じるのにカロリーが入ってこないことで、脳が混乱し、かえって食欲が増進したり、他の食品で糖質を求めるようになるのではないか。という仮説も提唱されています。
これもまだ議論の多い分野ですが、一部の人には起こりうると考えられています。
④甘味に対する習慣性・心理的依存
「カロリーゼロだから」と安心して、甘いものを摂取する習慣が続いてしまうことで、甘いものへの依存から抜け出しにくくなるという指摘もあります。
⑤安全性に関する懸念(一部)
過去には、サッカリンやチクロなどの人工甘味料が発がん性との関連を指摘されたこともありました(その後、安全性が確認されたり、使用が制限されたりしています)。
現在、日本で認可されている人工甘味料は、国の厳しい安全基準をクリアしたものですが、一部で長期的な影響に関する議論が続いています。
WHOのガイドラインでは…
なお、世界保健機関(WHO)は、2023年5月に人工甘味料の使用に関するガイドラインを発表し、減量や生活習慣病の予防のために人工甘味料を使用しないように提言しています。
これは、人工甘味料の長期的な安全性に関する懸念や、一部の研究で2型糖尿病や心血管疾患のリスク上昇との関連性が示唆されているためです。
これは、「もし人工甘味料を使うくらいなら、いっそ甘いものを減らす努力をしましょう」というメッセージに近いと解釈できます。
賢く活用するためのポイント
○摂りすぎない
「ゼロカロリーだからOK」と無制限に摂取するのではなく、適量を心がけましょう。
○バランスの取れた食生活の補助として
あくまで砂糖の置き換えであり、全体的な食生活の改善が最も重要です。
人工甘味料を使っているからといって、その浮いた分で他に甘いものを食べていては意味がありません。
他の食事のバランスを崩さないようにしましょう。
○自分の体と相談する
人工甘味料を摂取してみて、体に違和感がないか、食欲に変化がないかなど、自身の体調を観察することが大切です。
人工甘味料との賢い付き合い方:バランスが鍵
人工甘味料は、血糖値やカロリーを気にされる方にとって、たしかに有効なツールとなり得ます。
上手に活用すれば、食生活の選択肢が広がり、健康管理に役立てられるのもまた事実です。
しかし、その一方で、長期的に使い続けた場合の健康への影響については、まだ研究段階であり、世界中で議論が続いている状況です。
特に、一部の研究では、2型糖尿病や心血管疾患のリスク上昇との関連性が「示唆されている」点も忘れてはなりません。
現時点では、これらの情報が「確定」しているわけではありませんが、過度な期待や盲目的な摂取は避けるのが賢明と言えるでしょう。
私たちが目指したいのは、「甘さ」に対して健全な距離感を保つことです。
今回の記事で解説した人工甘味料のメリットとデメリット、そして最新の知見を踏まえた上で、ご自身のライフスタイルに賢く取り入れてみてください。
人工甘味料を上手に活用しつつも、ときには素材本来の味を楽しむことや、「甘いもの」の摂取量自体を見直すことも大切です。
最終的には、ご自身の健康と食生活のバランスを大切にすることが、より豊かな食生活へと繋がると思っています。