過去の記事で解説した「骨粗鬆症」や「糖化」に関連して、
今回は「糖化が骨折のリスクを上昇させるメカニズム」について、解説していきたいと思います。
過去の記事はこちら。
骨は「鉄筋コンクリート」密度と質の2つで守られている
骨の健康を考える上で、まず理解していただきたいのが、骨の構造です。
骨は、建物の「鉄筋コンクリート」に例えられます。
コンクリート:骨の「量」を測る指標である骨密度
カルシウムなどのミネラルがびっしり詰まっている状態を指します。
鉄筋:骨の「質」を担うコラーゲン繊維の束
骨のしなやかさや粘り強さを生み出す役割です。
骨の強さは、この「骨密度」と「骨質」という2つの要素で成り立っています。
骨密度検査の結果が良好でも安心できません。
もう一方の骨の質が悪ければ骨はもろく、簡単に折れてしまうからです。
糖化が骨の「鉄筋(コラーゲン繊維)」を劣化させる
では、なぜ糖化が骨折のリスクを高めるのでしょうか?
糖化とは、体内で余った糖がタンパク質と結合して、AGE(終末糖化産物)という劣化した物質を生成する反応のことでしたね。
この「糖化」が、骨のコラーゲン繊維に直接ダメージを与えます。
糖質を過剰に摂る生活は、糖化が進む大きな要因です。
糖化によってAGEが蓄積すると、コラーゲン繊維はまるでサビついた鉄筋のように、
本来の柔軟性を失って硬くなり、脆くなってしまいます。
これにより、骨のコラーゲンが担っていた「粘り強さ」や「衝撃を吸収するクッション性」が失われ、
骨は硬いだけで、脆い状態になってしまうのです。
「骨の質」の低下が、見えない骨折リスクに繋がる
これまでの骨粗鬆症の診断は、骨密度を測定することが主流でした。
しかし、この「骨の質」の低下が、骨折の大きな原因の1つであることが明らかになってきています。
骨密度が高くても、糖化が進んで骨の質が悪ければ骨折してしまう。
骨密度の検査だけでは見抜けない、「見えない骨折リスク」がここにあるのです。
今日からできる「糖化」対策で、骨の質を守る
いかがだったでしょうか?
糖質の過剰摂取が、肥満や糖尿病だけでなく、骨の中のコラーゲン繊維を劣化させ、骨折リスクを高めるということを知っていただけたかと思います。
日々の食事で糖質を摂る以上、糖化を完全に避けることはできませんが、その影響を最小限に抑えることは十分に可能です。
今日からできる対策として、以下の3つを意識してみましょう。
①糖質の摂取量を適正化する
これが1番重要です。特に精製された糖質の摂り過ぎに注意しましょう。
②運動で糖を消費する
体を動かすことで、余分な糖をエネルギーとして消費し、血中の糖濃度を安定させます。
また、骨に負荷をかける運動は、骨密度を高める効果も期待できます。
③抗糖化作用のある食品を摂取する
食物繊維やポリフェノール、ビタミンCなどが豊富な食品、発酵食品などを積極的に摂りましょう。
骨は一度脆くなると、元の状態に戻すのは簡単ではありません。
骨密度だけでなく、骨の質にも目を向けることが、生涯にわたって健康な体を維持する上で、非常に重要になります。