前回の記事で、カーボローディングの落とし穴について解説しました。
貯蔵量の少ないグリコーゲンに頼るのではなく、体にもともと備わっている膨大なエネルギー源、
つまり「脂肪」を効率よく使える体質にすることが、持久系スポーツにおけるパフォーマンス向上の鍵となります。
今回は、その理想的な体質である「ファットアダプト」について掘り下げていきましょう。
ファットアダプトとは?
ファットアダプトとは、文字通り「脂肪に適応した体」のことです。
通常、私たちの体は、エネルギー源として糖質を優先して使います。
しかし、糖質には限りがあるため、長時間の運動ではエネルギー切れ(ハンガーノック)を起こしてしまいます。
これに対し、ファットアダプトした体は、運動中に脂肪を効率良くエネルギーとして利用できるため、グリコーゲンの消費を抑えることができます。
これにより、体内のグリコーゲンを温存しながら運動を続けられるため、スタミナ切れを起こしにくくなるのです。
ファットアダプトの3つのメリット
①スタミナが格段に持続する
体脂肪は、グリコーゲンと比べて圧倒的に多くのエネルギーを貯蔵しています。
脂肪を効率良く稼働させると、この無尽蔵に近いエネルギー源を運動中に利用できるため、
長時間にわたるパフォーマンスを維持できます。
②血糖値が安定する
脂肪をメインエネルギーに使うことで、血糖値の乱高下が抑えられます。
これにより、集中力が途切れたり、急激な疲労感に襲われたりするリスクを軽減できます。
血糖値の安定は、肥満や生活習慣病などの予防に直結します。
③効率的な体脂肪燃焼を促す
ファットアダプトは、文字通り脂肪をエネルギーとして使う能力が高まっている状態です。
そのため、日常的な活動や運動においても体脂肪が燃えやすくなり、ダイエット効果も期待できます。
これらの効果は糖質制限生活を始めてから半年が経過しますが、僕自身も実感しています。
ファットアダプトを実現するための3つのステップ
ファットアダプトは、特別なトレーニングをしなくても、日々の生活習慣を少し見直すだけで実現できます。
①糖質を少し減らす
いきなり厳しい糖質制限をする必要はありません。
主食であるごはんやパン、麺類を少し減らす、お菓子や甘いジュースを控えるといった、無理のない範囲で糖質を意識的に減らすことから始めましょう。
これにより、体がエネルギー源として脂肪を使いやすい状態へ徐々に切り替わっていきます。
②適度な運動を習慣にする
激しい運動は必要ありません。
1日に30分程度のウォーキング、時々早歩きを組み込むなど、軽めの運動を習慣にしてみましょう。
時間が取れなければ、日常生活でこまめに動く、階段を積極的に利用するなどでも構いません。
まずはいつもより体を動かす事を意識しましょう。
体を動かすことで、脂肪燃焼のスイッチが入りやすくなります。
この際、心拍数を上げすぎない程度の「少しきついかな」というペースを意識すると効果的です。
③良質な脂質とタンパク質を摂る
脂質を上手く使うには、脂質を減らすのではなく、良質な脂質を積極的に摂ることが重要です。
アボカド、ナッツ、オリーブオイル、青魚などに含まれる脂質は、体のエネルギー源として効率良く利用されます。
また、筋肉のもととなるタンパク質も同時に摂ることで、代謝が落ちにくくなります。
肉、魚、卵、大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。
これらのステップは、できることから少しずつ取り入れるのが成功の秘訣です。
無理なく継続していくことで、体の変化を感じることができると思います。
まとめ
ファットアダプトは、アスリートだけに関係するものではありません。
一般の方にも血糖値の安定やダイエットにも繋がる、非常にメリットの多い栄養戦略です。
日頃から脂質をエネルギーとして使える体づくりを意識することで、より健康的で安定したパフォーマンスを手に入れることができるでしょう。