「炭水化物を減らしたら、腹持ちが悪いじゃないですか。」
健康指導していると高確率でこのセリフを言われます。
しかし、実は炭水化物の「腹持ちの悪さ」が、すぐにまたお腹が空いてしまう原因になっているのをご存じでしょうか?
お腹がすぐに空いてしまっては、間食に手が伸びてしまい、食べ過ぎにつながってしまいます。
その間食も糖質の多い物だったら、目も当てられません。
今回は、あまり知られていない意外な理由と、満腹感を持続させるためのヒントをご紹介します。
炭水化物が「腹持ちが悪い」とされるワケ
食事をすると、食べ物は胃に入ります。
満腹感というのは、この胃に食べ物が入っている時間や、そこから分泌されるホルモンによってコントロールされているのです。
私たちが食べる主な栄養素であるタンパク質、脂質、そして炭水化物には、
それぞれ消化にかかる時間(滞留時間)が異なります。
一般的な目安としては、以下のようになります。
炭水化物(ご飯、パン、麺など):約2〜3時間
胃を通過する時間が他の栄養素と比較して短いのが特徴です。
タンパク質(肉、魚、卵など):約4〜5時間
炭水化物よりも長く胃に留まります。
特に肉など固形のものほど消化に時間がかかります。
脂質(揚げ物、油分の多いものなど):約7〜8時間
最も胃での滞留時間が長く、ゆっくりと消化されます。
このように胃に留まっている時間は炭水化物が最も早いのです。
血糖値の変動も空腹感に関わっている
炭水化物による腹持ちの悪さには、血糖値の急激な変化も深く関わっています。
炭水化物、特に白米のような精製されたものは、体内で素早くブドウ糖に分解されます。
これにより、血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインスリンが大量に分泌されます。
そうなると、次は血糖値が急降下してしまいます。
低血糖状態だと脳がエネルギー不足と勘違いし、エネルギーを摂取するように命令します。
これにより、再び強い空腹感を感じてしまうのです。
この一連の流れは、腹持ちの悪さの大きな原因の一つと考えられています。
「満腹ホルモン」にも差があった?
さらに、満腹感にはGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)やCCK(コレシストキニン)などといったホルモンが深く関わっています。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
血糖値の上昇を抑える働きの他に、胃の動きをゆっくりにさせ、満腹感を長続きさせます。
同時に、脳の視床下部にある食欲中枢に働きかけ、食欲を抑制する効果があります。
CCK(コレシストキニン)
脂肪が小腸に届くと分泌されるホルモンで、胃の動きを緩やかにし、脳に満腹の信号を送ります。
これらのホルモンが分泌されると、グレリン(食欲増進ホルモン)の「お腹が空いた」という信号が弱まるため、結果として食欲が抑制され、満腹感が持続するのです。
これらは食欲を抑える働きがあり、タンパク質や脂質を摂ると分泌が高まることが分かっています。
炭水化物でもこれらのホルモンは出ますが、その効果は一時的で短時間で終わってしまいます。
つまり、炭水化物中心の食事だと、一時的な満腹感は得られても、すぐにまた食欲が湧いてきてしまうのです。
腹持ちを良くする3つのヒント
ここでは腹持ちを良くするためのヒントを紹介します。
①おかずにたっぷりのタンパク質と脂質、食物繊維をプラスする
肉、魚、卵、豆腐などのタンパク質、そして良質な脂質や食物繊維をたっぷり摂りましょう。
それにより、消化に時間がかかり、満腹感が長続きします。
②炭水化物の種類を見直す
白米などの精製された炭水化物は、体内で素早く吸収されます。
玄米や雑穀米、全粒粉のパンなど、食物繊維が豊富な「未精製」の炭水化物を選ぶと、血糖値の上昇が緩やかになり、腹持ちが良くなります。
もちろん、未精製だろうと糖質の多い食品ですから、食べる量には十分注意してください。
③「よく噛む」を意識する
噛む回数を増やすと、脳の満腹中枢が刺激されて満腹感を得やすくなります。
また、消化を助ける働きもあるので、一口30回を目標によく噛んで食べましょう。
まとめ
白米やパンなどの炭水化物は、実は「腹持ちが悪い」ということがお分かりいただけたでしょうか。
また、炭水化物を多く摂ること自体が、食欲をコントロールできなくなる原因の一つになっている可能性があります。
今回ご紹介したように、炭水化物は胃での滞留時間が短く、食べた後の血糖値の急激な変動が、すぐに空腹感を引き起こしてしまいます。
しかし、炭水化物を悪者にする必要はありません。
大切なのは、他の栄養素とバランス良く組み合わせることです。
・おかずにタンパク質と脂質、食物繊維をたっぷり摂る
・なるべく玄米や雑穀米などの「未精製」の炭水化物を選ぶ
・一口30回を目標によく噛んで食べる
これらの工夫をすることで、食事から得られる満腹感を長続きさせ、健康的な食生活を無理なく続けていくことができます。
ぜひ、明日からの食習慣に少しずつ取り入れてみてください。